課税要件の考え方
Q.
国内取引を課税対象取引とするためには、次の要件が必要であるとされています。
1.国内取引であること
2.事業者が事業として行ったものであること
3.対価を得て行うものであること
4.資産の譲渡、資産の貸付け、役務の提供であること
ところで、課税対象取引ついて、このような要件を付した理由はなぜでしょう。
A.
消費税の課税を国内で行われた取引に限定する理由は、消費税は内国消費税であり、国内で消費された財貨やサービスに負担を求めるものであるからです。
つまり、国外取引が課税対象外になるのは、消費税の「内国消費税」という正確に基づくものなのです。
付加価値税では、取引される財産の源泉地である生産・製造を行った場所を管轄する国で課税すべきであるという源泉地主義(源泉地課税主義)と、その取引によって財産が移転・消費される場所を課税・管轄する国で課税すべきであるとする仕向地主義(消費地課税主義)があります。
このうち源泉地主義によれば、製造・生産地で課税するのであれば、輸出物品は課税します。
輸入物品は課税しません。
これに対して、仕向地主義によれば、消費地で課税するのですから、輸入物品には課税しますが、輸出物品には免税しなければなりませんから、国境税調整が必要になります。
源泉地主義の主張は、政府から受ける利益は国内の生産高で示されますが、付加価値説は事業施設の生産活動に対する政府のサービスの対価として支払うのですから源泉地主義によるべきであるという一種の租税利益説を基礎としています。
これに対して、仕向地主義は税を消費者が負担すべきであるという考え方からすれば、消費物品が海外で課税されたか否かを問わず、消費をする国が課税すべきであるという担税者理論から導かれています。
日本の消費税は仕向地主義によっているため、国内取引と輸入について課税対象とし、一方輸出については免税とした上で国境税調整を行うという立場です。
(2)「事業者が事業として」の意義
消費税の課税を事業者が事業として行った取引に限定するのは、消費税の「間接消費税」という性格によるものです。
消費課税の区分手法は多様ですが、課税の段階と納税義務者によって区分しますと「直接消費税」と「間接消費税」に分けられます。
前者は消費行為そのものに課税するもので、ゴルフ場利用税、入湯税がこれに該当します。
後者はわが国「消費税」や酒税のように最終的な消費行為よりも前の段階で物品やサービス等に課税が行われ、税負担が物品やサービスのコストに含められて最終消費者に転嫁することが予定されているものです。
このように最終消費よりも前の段階で課税が行われるのは、最終段階で課税することが困難であるという課税技術上の理由によるものと考えられます。
※ゴルフ場利用税の納税義務者はあくまでゴルフ場の利用者でゴルフ場等は特別徴収義務者にすぎません。
消費税法第4条第1項では「国内において事業者が行った資産の譲渡等には、この法律により消費税を課する」と規定していますが、この場合の「資産の譲渡等」の意義については、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供」とされていますから、消費税の課税対象取引となるための要件は、「事業者が事業として行った取引」ということになりましょう。
この場合の「事業として」とは、「対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供が行われることをいう。」とされています。
この点について、課税庁の解説では「…例えば、所得税においては山林所得に区分される山林の伐採又は譲渡のように毎年継続して行われるものでないものであっても、山林についての育林、伐採、譲渡などが反復、継続、独立して行われることの蓋然性が認められれば、当該山林の伐採又は譲渡は「事業として」行われるものに該当することとなる。
また、所得税では建物の貸付が事業として行われているかどうかの判定、競走馬の保有にかかる所得が事業所得に該当するかどうかの判定の目安として、一定の規模あるいは収支の状況等を勘案する旨の規定を設けていますが、消費税においては、建物の貸付や競走馬にかかる譲渡、出走等が反復継続独立して行われるものであれば、規模の大小を問うものではないのである。」とされています。
これとは逆に、個人の生活用資産の譲渡は、いかに事業者が行うものでも「事業として」の取引ではありません。
また法人は事業を行う目的で設立されていますから、そのすべてが、「事業として」として取り扱われます。
(3)「対価を得て」の意義
課税対象取引を「対価を得た取引」とするのは、事業者が得た対価に担税力を見出すと共に、その対価が次段階取引の事業者に添加することが予定されているからです。
消費税における国内取引の課税対象は、「対価を得た」鳥h機に限定され、無償取引は課税対象外となります。これを「優勝取引課税の原則」といいます。
この場合の「対価を得て」について、取扱通達では、「資産の譲渡等に対して反対給付を受けることをいうから、無償による資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供は、資産の譲渡等に該当しない」旨を明らかにしています。
この点について、課税庁の解説では、「製造段階において製造場から移出する事実をとらえ、無償、有償を問わず消費者が消費する以上税負担を求めるという個別消費税や無償による資産の譲渡、資産の貸付及び役務の提供であっても課税の対象とするという法人税等の考え方と異なるのである。」としています。
注意したいのは「有償取引課税の原則」は無償取引を課税対象外とするだけで、有償取引はすべて課税対象とする意味ではないということです。
有償取引の有償分は「対価」でなければ課税対象としての要件は成立しないからです。
たとえば、フランスの一般税法典で、「課税対象者によって有償で行われた動産物品の引渡し、並びに役務の提供には付加価値税が課税される」とされていますが、この条文における「有償で行われた」は日本の消費税の「対価を得て」に対応する概念ですが、「有償」よりも「対価」の方が限定的です。
日本の消費税法では、収受した金額があっても、それが対価でなければ課税対象としないからです。
この場合の対価の額とは、「課税資産の譲渡などに係る対価につき、対価として収受し、または収受すべき一切の金銭又は、金銭以外の物若しくは権利その他の経済的利益の額をいい、課税資産の譲渡等について課されるべき消費税額等を含めないのですが、この場合の「収受すべき」とは別に定めるものを除き、その課税資産の譲渡等を行った場合の当該課税資産等の価格をいうのではなく、その譲渡等に係る当事者間で享受することとした対価の額をいう」とされています。
※消費税額等とは消費税額及びその消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額をいいます。
対価性があるか否かの判断は、単に売主が課税対象となるか否かを判断するだけでなく、買主が税額控除できるや否かを決めることになりますので、消費税の計算では極めて重要です。
また対価性のない取引は、課税対象外取引ですので、非課税取引と異なり、課税売上の計算に関係がなく、税額控除の計算にも重要な要素を持っています。
ただ、消費税の関連法令、通達等において対価の意義を明確に定めていないこと、対価の支払の基準となる資産の譲渡等と反対給付たる対価の結び付きが明らかでないこともあって、実務上トラブルが少なくありません。
なお、資産の譲渡、資産の貸付、役務の提供を要件としているのは資本取引や船舶賠償等の消費になじまない取引を課税対象としないという意味です。
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