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課税対象外取引のための課税仕入れ

category : 所員 金鹿 2012.12.23 

51MYFEARYKL._SS500_Q,次の場合は、課税仕入として仕入税額控除の対象になりますか。
1.フランスに所在する建物を売却するために日本国内で発行される新聞に出した広告料の対価
2.新株発行に伴う株券の印刷代、証券会社に支払う引受手数料
3,資産の譲渡等に該当しない損害賠償金を請求するために弁護士に支払った報酬

A
1.用語の定義
国内取引における課税対象取引の規定と消費税の課税標準は、次のように表現されています。
・課税対象取引:国内において事業者が行った資産の譲渡等(法4①)
・課税標準:課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は課税資産の譲渡等の対価(法28)
注意したいのは、課税対象取引には課税、非課税を含んでいるため、単に「資産の譲渡等」としていますが、消費税を課税する場合の課税標準は「課税資産の譲渡等の対価」としていることです。
ここで、「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付並びに役務の提供」(法2①八)とされており、「課税資産の譲渡等」とは、「資産の譲渡等のうち、第6条第一項に規定により消費税を課さないこととされているもの以外のものをいう」(法2①9)とされています。

つまり、「資産の譲渡等」の定義では、「国内において」という制限はされていませんが、消費税法第6条第一項(別表第一)は、国内取引における非課税だけを規定したものです。
つまり資産の譲渡等は国外取引を含む観念ですが、課税資産の譲渡などを規定するため資産の譲渡等から除外される非課税取引は国内取引に限定されているため、「課税資産の譲渡等」の中には国内取引が含まれてしまうのです。

(2)国外建物譲渡のための国内取引
Q(1)のフランスに所在する建物を譲渡した場合には、「課税資産の譲渡等」には含まれるのですが、法第4条第1項<課税の対象>において「国内において」と限定されているために課税対象外取引になるため、消費税が課税されないと解釈するのです。
ところで、フランスに所在する建物を譲渡するため、日本国内において発行される新聞に売却公告を出した場合は、その広告料は、「課税資産の譲渡等のみに要する課税仕入」に該当するものとして税額控除の計算をします。
この点については、消費税法基本通達11−2−13に次のような取り扱いが置かれています。

(国外取引に係る仕入税額控除)
11−2−13 国外において行う資産の譲渡等のための課税仕入等がある場合は、当該課税仕入等について法第30条<<仕入に係る消費税の控除>>の規定が適用されるのであるから留意する。
この場合において、事業者が個別対応方式を適用するときは、当該課税仕入等は課税資産の譲渡等にのみ要するものに該当する。

ここでは、国内における資産の譲渡等のために必要な課税仕入等に限らず、国外において行う資産の譲渡等(国外取引)のために国内において行った課税仕入等についても、仕入税額控除の対象となることを明らかにしています。
なお、課税庁の解説では、この取扱について「課税事業者は、その課税期間における課税標準額に対する消費税額から、その課税期間中に国内において行った課税仕入に係る消費税額及びその課税期間中に保税地域から引き取った課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額(課税仕入等の税額)の合計額を控除することとされている。(法30①)
したがって、国内における資産の譲渡等のために必要な課税仕入などに限らず、国外において行う資産の譲渡等(国外取引)のために国内において行った課税仕入などについても、仕入税額控除の対象となるのである。本通達は、念のため明らかにしたものである。」(消費税法基本通達逐条解説)とされています。」
消費税法第30条第二項第1号(個別対応方式による仕入税額控除)に規定する個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合には、課税仕入等について、
①課税資産の譲渡等にのみ要するもの
②課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡にのみ要するもの
③課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの
に区分することとされています。
このためフランスに所在する建物を譲渡(国外取引)するため、国内で広告をして広告料を支払った(国内における課税仕入)場合は上記①〜③のいずれに該当するかが問題になるでしょう。
もともと「課税資産の譲渡等」とは、資産の譲渡等のうち消費税法第6条第1項(非課税)の規定により非課税とされているもの以外のものをいうこととされており(消法2①九)、さらに同項の規定では、国内において行われる資産の譲渡等のうち消費税法別表第一に掲げるものが非課税とされていますから、国外において行う資産の譲渡等はすべて課税資産の譲渡等に該当することになります。
したがって、国外において行う資産等のために国内において行われた課税仕入等は、課税資産の譲渡等にのみ要するもの(上記区分の①)に該当することになります。

(3)資産の譲渡等に該当しない取引のための課税仕入
消費税の仕入税額控除の計算を個別対応方式(消法30②一)で行う場合は、その課税期間中における課税仕入等を帳簿等において、
①課税資産の譲渡等にのみ要するもの
②課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(その他の資産の譲渡等)にのみ要するもの及び
③課税資産の譲渡などとその他の資産の譲渡などに共通して要するもの
に区分しなければならないこととされています。
ところで、株券の印刷や、新株発行に伴って証券会社に支払う引受手数料のように直接的には資本取引という資産の譲渡等に該当しない取引のために要する課税仕入をどのように取り扱うかが問題になります。
また、損害賠償金を請求する取引(資産の譲渡等に該当しない取引)のために弁護士に報酬を支払う場合も同様です。
条文をそのまま読む限りは、課税対象外取引のうち「資産の譲渡等に該当しない取引」は、上記の①〜③のいずれにも該当しないことは明らかです。
しかし条理からすれば、このような課税仕入等であっても課税売上割合が95%以上の場合又は95%未満の場合でも、一括比例配分方式による場合には、仕入税額控除の対象となるのですから、非課税の仕入と同じく、まったく仕入税額控除の対象外とすることは適当ではありません。
また、資産の譲渡などに該当しないからといって、「非課税資産の譲渡などのみに要するもの」に区分するのも問題です。
この点は法令規定の不備から派生する問題ですが、取り扱い(消基通11−2−16)において「…資産の譲渡等に該当しない取引に要する課税仕入等は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当するものとして取り扱う。」として現実的な解決を図っています。
この点について、課税庁の解説では、「…直接的には不課税取引(課税対象外取引)のために要するものといっても、その間接的効果を考えれば資産の譲渡等の全体に寄与することには違いないから、非課税資産の譲渡等にのみ要するものともいえない。そこで、このように不課税取引(課税対象外取引)に要する課税仕入等は、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものとして取り扱うこととして、本通達においてその旨を明らかにしたものである。」(消費税法基本通達逐条解説)としています。

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